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9R デビュー戦んのことをすごく絶賛していた。その記事を読んだファンは「ニューホープで好成績を収めた一介の新人レスラー」を中谷園子という名前で認知する事にもなったのだ。自分をここまで持ち上げてくれた事に対する感謝の心は態度に表れている。それだけに、先輩からも後輩からも、人望は厚かった。その中谷さんを相手に私がデビュー戦。デビューの順番では私よりいっこ上に過ぎない先輩だけど、年功序列という部分を越えて今の中谷さんは自分のポジションを完全に確立している。さっきポストの上に立ったとき以上に足が震えているのが自分でも解った。「最近は休憩前の前座では、一番最後か最後から二番目あたりで試合をしているこの私にいきなり第一試合でやれといわれたときはちょっとムッとしたんだけどね。ま、他ならぬ愛ちゃんの相手だから仕方ないな、ってことでね」 言いながら笑う中谷さん。言葉だけ聞いたら、すごく偉そうに聞こえるけど、ちっとも嫌味に感じないところが中谷さんのキャラクターとしての得な部分ではあるけど、今の私にはそんな事を考える余裕は全くなかった。 放心状態のまま練習が終わり、食事を取って合宿所に戻った。 「中谷ちゃんから聞いてると思うけど、愛ちゃんのデビューが正式決定したからね。次期シリーズ、『レッスル・クイーン・フェスティバル』の開幕戦、第一試合で中谷園子対山神愛、だよ」 あらかじめ中谷さんに言ってもらってはいたものの、沙希さんから正式に言われたときも私は放心状態のままだったため、小さく頷くのが精一杯だった。 「一応サイズとか合ってるはずだけど、もしきつかったり大きすぎたりってことがあったら言ってね。当日までには間に合わせるから」 |
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