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8R 道場パート2

験があるので、割とスムーズに出来た。
「ここまでの受身はほぼパーペキだな。でもここから先はどうかな。中谷、ボディスラム」
 水野さんの言葉に、中谷さんはいきなり私を抱え上げた。小柄な中谷さんのどこにそんな力があるのか、簡単に持ち上げられて私は慌ててしまった。と、いきなりマットに叩きつけられる。
「!」
 全身を強く打って声も出ない。ボディスラムはプロレスでは基本的な投げ技の一つだけど、私に取っては充分必殺技だ。いま押さえ込まれたら確実にスリーカウント取られているだろう。
「愛ちゃん、基本は同じだよ。おヘソを見るの」
 一人で立ち上がれない私を無理やり立たせながら(容赦無いなぁ……)中谷さんが言った。そしてまたボディスラムで投げられる。タックルは立っている相手を倒す技だから、一人で倒れて受身を取るのがそのまま応用できたが、持ち上げられて投げられるなんて生まれて初めての経験だ。頭で解っててもどうにかなるというものではなかった。またもや全身の痛みに苦しむ私だった。
「中谷、受身取れなくてもいいから、もっともっと、何回でも投げてやれ。命に関わるから頭だけは注意しろよ」
 と水野さん(こちらも容赦無い……)。水野さんの言葉どおり頭は打たないように投げてはくれるんだけど、“投げられ処女”の私には痛すぎる仕打ちだ。延々と何回も投げられ続けて私は完全に感覚も麻痺してきた。
「水野さぁん、いつまで投げるんですかぁ? もう疲れましたよぉ」
「なんだ、中谷、だらしないなぁ。じゃあ、取り合えずここまでということにしておくか」
 中谷さんが根を上げてくれたおかげで私は投げられ地獄から解放された。中谷さんは私に気を使っ
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