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8R 道場パート2

「手本を見せた中谷も直接だったでしょ」
 あっけなく私の申し出は却下された。
「愛ちゃん、自分のおヘソのあたりをよく見るんだよ」
 中谷さんが一言。
 ……言っている意味がよく解らない。何かの謎かけかな?
 とにかく言われた通りおヘソのあたりを見ながら受身を取ってみた。段差があるから痛いだろうな、と思っていたが普通に受身をするのと同じくらい体へのダメージは無かった。
「上手いじゃない」
 と水野さん。
 そうか、おヘソを見ようとすると自然に顎が引けてしまうから、倒れても頭を打たないで済むんだ。普通に受身を取るときも顎は引いてるけど、中谷さんの言葉のおかげで、より顎が引けた状態になってたんだな。
 その間晶ちゃんはブツブツ言いながらスクワットをしていた。

 自分で倒れて受身を取る練習が一段落して、いよいよ実技だ。中谷さんが私にタックルを仕掛けてくる。思わず重心を移動してタックルを受け止めてしまった私。
「お〜い、山神。受身の練習なのにタックルを切ってどうすんだよ」
 水野さんが呆れ顔で言った。
「……スミマセン。中谷さん、もう一度お願いします」
 仕切りなおしてタックルを仕掛ける中谷さん。タックルを受けて受身を取るということも南さん相手に経
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