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8R 道場パート2「強かったです。私が勝てたのも運でした」中谷さんは実際に戦っているので水野さんの言葉の意味がよく解るのか頷いている。 「まぁ、とにかく中山は要注意だね。あともう一人……」 水野さんが指差したのは……、私だった。 「山神、あんたも中谷の優勝を阻む選手になると思うよ」 「わ・私ですか? まだデビューもしてないのに!?」 私がうろたえていると、水野さんはクスリと笑った。 「少なくともパワーだけ見たら、今この道場にいる連中の中では山神が一番だ。しかも力だけじゃない。スパーリングで私にやったタックルはマジ効いたよ」 「でも、水野さんは空手の心得がありますし、紺野さんはアマレスの実力者、中谷さんは柔道で高校時代無敗だったんですよね。私はそういう格闘技は全然してないし、スポーツ歴と言っても学校の体育の授業くらいなんですよ」 「だからこそだよ。変な癖がついてないからどうにでも強くなれる可能性がある。戦う相手としては怖いものがあるね。私らのように他の競技をプロレスに応用したのではなく、山神はいわゆるプロレス的なプロレスをやってくれると思う。私が空手のエキスパートであるように、山神はプロレスのスペシャリストになれるよ。いつも一緒にいる中谷はどう思う?」 中谷さんはクソ真面目な顔で 「私は十年に一人の逸材だけど、愛ちゃんも同じくらいの逸材だと思います」 と答えた。自分で自分を十年に一人と言い切るなんて、さすが中谷さん。 「私と紺野の試合は、自分で言うのもなんだけど、前座の黄金カードって言われてたし、その言葉に恥 |
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