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8R 道場パート2

い事だと思う。紺野さんではなく水野さんが優勝した事は誤算といえば誤算だけど、その二人がワンツーフィニッシュを飾ったのだから結果オーライって事らしい。
「でも、マッチメーカーの山吹沙希はダメッスねぇ。まともに日程組んだら中谷選手が優勝しても不思議じゃないのに、こんな日程じゃあこの成績は奇跡みたいなもんッスよ。中谷選手に個人的に恨みとかあるんスかね?」
「ち・違うよ! 沙希さんだってこんな日程組みたくて組んだんじゃない!」
 タッちゃんの言葉に私は思わず声を上げていた。
「? 山神さん、なにか知ってるんスか?」
「え? あ……その……」
 沙希さんにテレビ局の人間にマッチメークに口出しされていた事は誰にも言ってはいけないと言われていたので私は言葉に詰まってしまった。なんて説明したらいいのか迷っているところに中谷さんが
「こんな日程ってどんな日程? 私に不利な日程だったの? 気付かなかったけど」
 と一言。三人の間に風が舞った。
「と・とにかく! 早く道場に行かないと先輩たちにどやされますよッ!」
 強引に話題を終らせて、私は中谷さんの手を引っ張り道場に向かった。
「あ・あの……、まだサイン書いてもらってないんだけど……」
 というタッちゃんの声が背後で聞こえたような“気がした”。

 道場に着くと、ニューホープカップに出場した先輩たちがなにやら雑談していた。
「紺野さんはヨーロッパへ、水野さんはアメリカへ、か〜」
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