もどる

7R 新人戦

「水野さん、もう無理ですよ!」
「やるといったらやるんだよ! もし次の試合でタオルでも投げたら許さないからね!」
 というセコンドと水野さんの声が聞こえた。
 沙希さんは水野さんに向かって言った。
「水野ちゃん、いいのね?」
「やりますよッ!」
「腕がどうかなってしまって、選手生命が断たれることになっても後悔しない? 中谷ちゃんの関節技の威力から、この言葉が大げさでない事はわかるでしょ」
「……後悔……しません……!」
 客席はリング上の異常事態にどよめいていた。沙希さんはマイクを取って、リングアナウンサーと二・三言葉を交わしてから
「両者のダメージを考慮して、今から十分間の休憩とします。両者による優勝決定戦進出者決定戦は休憩のあととします」
 と言った。そして
「水野ちゃん、本当にいいのね?」
 と改めて水野さんに確認する。水野さんは無言で頷いた。

 そして再戦。水野さんは腕にブ厚いテーピングをした痛々しい姿をしていた。中谷さんには勝って欲しいけど、その姿を見たらどちらを応援していいのかわからなくなっていた。
 水野さんの姿を見て、さすがの中谷さんも攻めに躊躇が感じられた。怪我したところをあえて攻める
前ページ
次ページ