もどる

7R 新人戦

ちゃんが優勝しようとしたら、今日は三試合しないといけないわけよ」
 と答えた。
 一日三試合!? それも水野さんと紺野さんを相手に!? 最後の最後に中谷さんの過酷なスケジュールの全貌が明らかになって私は愕然とした。
 しかし、プレッシャーを感じているのは水野さんも同じ。水野さんは中谷さん相手に勝てば勝ち点13となり、後は同率一位の紺野さんとの決勝戦なのだが、もし負けたら、やはり一日三試合の可能性がある。
 そして試合が始まった。中谷さんはどれだけ緊張しているだろうと心配していた私だけど、中谷さんはいつもの中谷さんだった。
「プレッシャーをプレッシャーと認識する能力が完璧に欠如しているとしか思えないわね……」
 沙希さんは苦笑い。
 しかし、こうなったら有利なのは完全に中谷さんだった。水野さんの攻めはすべて空回りして、中谷さんは徐々に、それも確実に水野さんを追い詰めていく。
 試合終了のゴングがなったとき、私は思わず握り締めた両拳を高く突き上げていた。12分46秒、腕ひしぎ逆十字固め、中谷さんの勝ち! 中谷さんは水野さん相手の初勝利と同時に優勝への第一関門を突破したのだ。
「水野ちゃんのギヴアップがちょっと遅かった……。怪我でもしてたら、再戦は無く、そのまま優勝決定戦かもしれないよ」
 沙希さんの言葉に私は水野さんを見た。腕をかばいながら立ち上がるその顔は未だに激痛に歪んでいる。額には脂汗までにじんでいた。この痛がり方は尋常ではない。
前ページ
次ページ