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7R 新人戦

 といいながら、意外と元気にリングを後にする中谷さん。逆に紺野さんは息も絶え絶えで、セコンドの肩を借りなければ立ってもいられないくらいの状態だ。どちらが勝者かわからない、とはこの事だろう。
「中谷さん、結果は負けでしたけど、でも、内容では中谷さんの圧勝でしたよ」
「普通の試合ならそれでもいいけど、公式リーグだったら結果の方を重視しなきゃ。負けじゃあ意味無いよ」

 しかし、初戦で紺野さんをあれだけ攻め込んだ事で、中谷さんは完全に勢いづいていた。過酷なはずの中谷さんのスケジュールなんて全く問題ではなかった。次のリーグ戦の相手、橋田先輩をスリーパーで今度は完璧に締め落としてレフェリーストップで勝ちを収めたのを皮切りに、残りの日程全て、引き分けが一つあったものの無敗で最終戦まで突っ走ったのだ。見ていて私は上の人間に対して「ざまあみろ(あ、汚い言葉使ってしまった……)」という思いでいたが、それはマッチメーカーの沙希さんも同じ気分だったと思う。

 そして最終戦。
 中谷さんは公式リーグを四勝一敗一分けの勝ち点9。五勝一分け勝ち点11の水野さんとの試合を向かえた。この時点で紺野さんは、六勝一分け勝ち点13の一位で公式リーグを終了していた。
 え? ということは、ここで中谷さんが勝ったら、勝ち点11で水野さんと同率二位という事になるんじゃないの? 一位と二位で決勝を行うという事だけど、もし二位が二人になったらどうするのかしら……。私の疑問に沙希さんは
「そのときは、中谷ちゃんと水野ちゃん、優勝決定戦進出を賭けて再戦という事になるよ。だから、中谷
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