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7R 新人戦の出向者)の存在さえなければどの選手にも平等で、実力どおりの結果が出せる試合を組めてたはず。ということは、もしかして……。 私は、道場の隅で一人黙々とトレーニングしている森山さんに歩み寄った。 「あの、森山さん……?」 「え? あぁ、愛ちゃんだっけ」 「沙希さんとの試合で、森山さんは自分からタイトルマッチを辞退したと言ってましたよね」 「あぁ、そんな事も言ったかしら」 「それってもしかして、上の人に圧力かけられてたんじゃないですか? 沙希さんにはその事は言わないで自分ひとりだけでそれを背負い込んだってことなんじゃ……」 森山さんは一瞬キョトンとたが、すぐににこやかな笑顔に戻った。 「考えすぎよ。それに、ノンタイトルでは沙希ちゃんに私は確かに勝ったかもしれない。でも、タイトルマッチも同じ結果とは限らないでしょ。沙希ちゃん、普通の人と逆だから」 「逆?」 「タイトルマッチとなったら、絶対負けられないって普通の人は思うでしょ。ところが沙希ちゃんは単純にタイトルマッチに勝った人がベルトを巻くだけって考えてるのよ。だから沙希ちゃんは仮に負けても『自分より強い人がベルトを巻くだけ』って感じで、いい意味の開き直りってところがあるの。だから伸び伸びと自分の実力をフルに発揮できるのね。逆にノンタイトルなら『もし負けたらチャンピオンのクセにってファンに思われるかもしれない』って体が緊張して固まってしまうの。ベルトがかかった試合なら私より沙希ちゃんが断然有利よ。前哨戦なんかでどんなに苦戦した相手でもタイトルマッチでは確実に勝ちを |
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