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7R 新人戦

「給料よ」
「給料? でも私、まだ選手じゃないですよ」
「選手じゃないから、額は少ないのよ。ゴメンね」
「え、いや、じゃなくて、個室があって食事とか光熱費まで出してもらって、おまけにトレーニングまでつけてもらって……、その上給料まで……?」
 普通は私が逆にお金を払わなければいけない立場のような気がする。
 ちなみに、巡業中などは、先輩たちにコスチュームなどの洗濯を頼まれてよくコインランドリーに行ったんだけど、その度に小遣いだ、と結構お金をもらっていた。確か合計すると六〜七万くらいになったと思う。
「部屋代なんかは経費で落ちるから。それに愛ちゃんだって団体的には貢献してくれてるよ。会場で椅子を並べてくれたり、チケットのもぎりもやってくれた。次のシリーズからはリング設営もやってもらうつもりよ」
「あ・あの、でも、その巡業中に結構お小遣いもらったし……。沙希さんだってくれたじゃないですか」
「それは“お小遣い”、これは“給料”。いいから受け取りなさい。給料もらうのも愛ちゃんの義務よ」
 そう言われて私は恐る恐るその封筒を受け取った。
「愛ちゃんが巡業中にどれだけお小遣いもらったか解らないけど、それと同じくらいかひょっとしたら給料の方が少ないかもね」
 沙希さんはそう言いながら笑った。

 部屋に戻って封筒を開けると、五万円入っていた。確かに小遣いの方が多い……。労働基準法に照
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