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6R 前座戦線

「でもまぁ、そのくらいはいいハンデだね!」
 前言撤回……。

 シリーズ最終戦は大阪で行われた。
 その頃には、沙希さんの言葉どおり、前座戦線はすごく白熱したものになっていた。中谷園子という選手のデビューがその引き金になったのは確かだった。中谷さん本人は相変わらず当然の結果だとか嘯いて(と言うか本気?)いたけど。

 リング設営の間、会場の前で時間を潰していると
「山神さ〜ん!」
 と、聞き覚えのある男の人の声がした。声のした方を見て私は思わず後すざりしてしまった。
「お・追っかけのタッちゃん……? どうしてここに……?」
 確かこの前会ったのは東京だったはず……。
「やだなぁ、大きな試合があったらどこにでも行くからこその追っかけでしょ? 今日、山吹沙希のタイトルマッチがあるから来たんですよ」
 東京で会った時も、今日も、休日なんかじゃない、立派な平日だ。しかもタッちゃんは沙希さんよりも年上、いい大人だ。いったい仕事とか何してるんだろ。
「そうそう、この前の写真、持って来たッスよ」
 そういえば、タッちゃんとツーショットで写真撮らされたっけ。私は「ありがとう」と写真を受け取った。
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