もどる

6R 前座戦線

 何気にかなりキツイお言葉。中谷さんは
「がーん」
 と口に出してショックを受けた事を表現する。……って、口で「がーん」という時点であまり堪えてないようにも感じるけど。
「トップレスラーもフィニッシュ級で使う裏投げは禁止にしておくけど、それ以外の柔道技は思いっきりやりなさい!」
「え? いいんですか? やった!」

 次の日、再び紺野さんとの試合が組まれた中谷さん。柔道における投げ技が使えるということで安心したのか、グラウンドの攻防でもレスリングの猛者である紺野さんに対して互角以上に渡り合ってた。
「ほら、元々地力は充分あるのよ。将来的に見たら素質は紺野ちゃん以上よ」
 今日の沙希さんはリラックスしていた。このままいけば勝てると思ってたみたい。でも、中谷さんはやっぱり中谷さんだった。一本背負いで見事に紺野さんを投げ切ったところで
「やったぁ、一本! 勝った勝ったぁ!」
 と喜び始めた……。
「バカ! 関節狙うかフォールしなさい! 柔道じゃなくプロレスよ!」
 沙希さんの叫びもむなしく、起き上がった紺野さんに後ろからスリーパーホールドをかけられ、即失神。今日もレフェリーストップ負けした中谷さんだった……。
 沙希さんは、もう何も言う気力も無くなったみたい……。
前ページ
次ページ