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6R 前座戦線

背骨にダメージを与える技)で水野さんに負けてしまった。
「沙希さん……? 負けちゃいましたね……」
「柔道と勝手が違うところに勢いよくタックルで倒されて、倒れたところで柔道時代の悪いクセが出ちゃったね……。一本とられた、負けた、て感じで動きが止まってしまう。頭では解ってても、体に付いたクセはなかなか取れないのよね……」

 次の日も3分48秒チキンウィングフェイスロック(腕を極めながら顔面を締め上げる技)で失神してレフェリーストップで紺野さんに負けた中谷さん。
「今日も中谷さん、負けちゃいましたけど……」
「柔道時代、締め技の練習のクセで完全に落ちグセが付いちゃってる……」

「なんでせっかく柔道でいいものを持ってるのに、試合では使わないの!? 柔道時代の経歴見たら、一本背負いが得意みたいじゃない! 相手は柔道に対しては素人なんだから、簡単に投げれるはずよ!」
 連敗した中谷さんに、沙希さんの小言が始まった。こういう時私は、先輩として晶ちゃんを指導するふりをして巻き添えを防いでいる。
「派手な大技は禁止なんですよね。柔道では一本背負いは派手な大技なんで……」
「そうかぁ、今日の中谷ちゃんの試合は柔道の試合だったんだぁ。私はてっきりプロレスの試合だと思ってたけど違ってたみたいね」
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