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5R 巡業

「ンなモン、レフェリーが慌てて止めに入ったらそれが反則なんだと思えばオッケーよ」
「そ・そういうものなんですか?」
「そういうものなの!」
 いまいち信用できない……。今度沙希さんに聞いてみよう。

 次の日、沙希さんに事務所の方に呼ばれた私は、入門以来久しぶりに自社ビルを訪れた。
「あの、何か用ですか?」
 私の言葉に沙希さんは笑顔で答えた。
「まあまあ、とりあえず座って。良美ちゃん、コーヒー二つお願いね」
 沙希さんは私をソファーに座らせると、事務所の女性社員に声をかけた。練習のときの怖い沙希さんではない、入門以前の優しい沙希さんがそこにはいた。
「明後日からシリーズ巡業が始まるんだけど、その開幕戦で中谷ちゃんのデビュー戦があるのは聞いてるよね?」
「え? あ、はい」
「中谷ちゃん、私の付き人なんだけど、デビューしてしまうと選手もこなさなきゃいけないからいろいろ大変なのよ。だから愛ちゃん、私の付き人になってくれないかな?」
「私がですか?」
「そう難しく考えなくても、中谷ちゃんの補佐程度でいいからさ。それに付き人も修行のうちよ。私も新人のころ社長に付いてて、それでプロレスのイロハを習ったようなもんだしね」
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