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5R 巡業

 沙希さんと社長、あるいは中谷さんと沙希さんが結構気安く話しているのは、付き人ということで気心知れてるからなのかな?
「解りました。役に立てるか解らないですけど、がんばります」
「そう改まらないでいいってば」
 沙希さんの社長に対する態度はただのおちょくり、中谷さんの沙希さんに対する態度は素の部分(つまり天然)なんだけど、この時の私は全く気付くことなく、一人で勝手に納得していた。

「沙希さん、なんだって?」
 合宿所に帰ると、すぐに中谷さんがやって来て私に聞いてきた。
「中谷さんの補佐係を承りました」
 私がそう答えると、中谷さんは首をかしげた。
「私を補佐ぁ? 補佐されるような立場じゃないよ。沙希さんのように社員じゃないし」
 私は吹き出しそうになりながら続けた。
「沙希さんの付き人って事ですよ」
 中谷さんは動きを止めて、まじまじと私を見つめた。タレ目だが何か甘えてるような錯覚をする目、そして右目の端には今気が付いたが泣きボクロまである。しかも女の目から見ても中谷さんはかなりカワイイ系だ。こんな目で見つめられたら男の人はコロッといっちゃうんじゃないかな。
 ……なんて考えてたら
「付き人? 断っておいた方が良かったと思うけどなぁ。こう言っちゃなんだけどあれで沙希さん人使い
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