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4R 道場南さんは頷くとリングに上がった。「さ、どこからでも来な」 私も恐る恐るリングに上がると南さんと向き合った。 「じゃ、行きます……」 私は南さんに両足タックル(みたいなもの)をやった。しかし私より小さな南さんはびくともしない。 「タックルを防ぐことを『切る』と言うんだけど、お前のは切るまでも無いぞ。そんなのじゃ素人だって倒せないな」 南さんが笑いながら言った。 「済みません……」 「手本を見せてやるよ。倒されないように必死に踏ん張れよ」 言われた通り私は立ち上がり踏ん張った。が、簡単に倒されてしまう。思わず反射的にさっき練習した受け身を取ったが、それをしなかったら後頭部をまともに打っていただろう。 「南、手加減してやれよ」 松田さんが笑いながらリング下から南さんに声をかけた。そして私に 「体はグッと前に押す、そして相手の足を抱え込んだ両腕は手前に引く。そうしたら相手は上から押されて下から引っ張られる訳だからバランスが崩れるだろう。相手の体勢さえ崩せばどんな巨体でも倒せるんだ。もう一度やってみな」 と言った。 「はい」 |
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