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4R 道場

 再び道場に来た。スイッチに手を伸ばして電気を消そうとしたところで、私は胸の高鳴りを感じた。振り返ると目の前にはリングがある。なぜだろう、リングを見ていると更にドキドキしてくる。そっとロープの下を潜ってリング内に入る。胸の高鳴りは最高潮に達していた。思わず、中谷さんがやっていたのを思い出しながら受け身を取ってみた。
「痛ッ!」
 背中に凄い衝撃が走った。
「受け身は倒れたときの衝撃をやわらげるためなのに……。単に私が下手なだけか」
 何度かやる内にコツが掴めてきた。こうしたら自分のダメージも最小限に抑えられて音の迫力も出るのか……。
 調子に乗った私はサンドバッグ相手にタックルの真似事をしてみた。
 先輩達はこうやってたな。体勢を低くして相手の足を抱え込んで……。

「誰かいるの!?」
 突然の声に私は驚いて立ち上がった。
「なんだ、この前入った新人じゃない」
 スラッシュ松田さんと、もう一人……南さんだったかな。
 私は沙希さんとの試合を思い出して体がすくんだ。
「す・済みません! すぐ帰ります!」
「いいよ続けな。タックルの練習してたんだろ。サンドバッグじゃなく……、南、相手してやりな」
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