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4R 道場

 言いかけた私の口を中谷さんは手で塞いだ。
「だから言ったでしょ。一度もリングに上げさせて貰えないからって。私も入門してしばらくは腐ってたから」
 中谷さん、ありがとうございます……。

 中谷さんの個室はこざっぱりしていて私物がほとんど無かった。押し入れから布団を取り出して床に敷く。
「悪いね。布団まで出してもらって」
「いいですよ。明日の練習は私がうまく言っておきますから休んで下さい」
「うまく言うって、どんな?」
「バナナの皮に滑って腰を強打したとでも……」
「ちょっとぉ! それじゃただの馬鹿じゃない! もう頭に来た。意地でも休まない!」
 中谷さんは口を尖らせたけど、悪いけど実際有り得そう。

「あ、いけない。道場の電気消すの忘れてた。中谷さん、もう一度道場に行ってきます」
「あ〜、行ってらっしゃい。私はもう大丈夫だから戻ってきたらそのまま自分の部屋に帰っていいよ」



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