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3R 入門

 私は先程沙希さんがやって見せたのを思い出しながらスクワットを始めた。見た限りは簡単そうだったが、数をこなしていく内に膝がガクガクになってきた。ノルマ達成の頃には、もう顔は半ベソ状態だった。
「……きゅうじゅう……きゅう……ひゃ……く……!」
 思わずその場にへたり込んでしまった。足に全く力が入らない。完全に膝が笑っている。
「休んでいいなんて誰も言ってないわよ。次、プッシュアップ20回を3セット!」
「は・はいぃ!」
 私はほとんど泣き顔になっていた。確かにジム通いしていた頃の私にとってトレーニングは趣味ではあった。しかしスクワットなんてやった事は無かったし腕立て伏せなんて今日の1セット分程度の回数しかしてなかった。そうだ。プロレスは趣味なんかじゃないんだ。

 一通りテストも終わった。なんとか合格は貰えたらしいことだけは覚えている。完全に死んでる状態の私の体を中谷さんがマッサージしてくれたがお礼を言う気力さえも残っていなかった。
「今日のテスト、今の私なら充分こなせるけど、同じ内容を入門の時にやらされたら失格間違い無しだよ」
 中谷さんが呟くように言った。
「なんか今日のテスト、他の人に比べて回数とか種目が多かったのよね。ったく、悔しいなぁ。それだけ愛ちゃんが期待されている証拠だもんね」
 そこに沙希さんがやって来た。
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