もどる

3R 入門

「違うよ。道場は別にあるの。歩いて行ける距離だけどね。ここは事務所等がある自社ビルだよ」

「ちわ〜っす。山神愛さんを連れて来ました〜」
 事務所のドアを開き、中谷さんが例によってハイテンションに言うとソファーに座っていた人が立ち上がった。沙希さんだ。
「中谷ちゃん! 事務所に入るときはノックするように言ったでしょ!」
 言いながらも沙希さんは私の顔を見ると笑顔になる。
「よく来たね。早速だけど社長に紹介するからついて来て」
 と言いながら部屋の奥の「社長室」と書かれたドアを指差した。
「あの〜、私は?」
 中谷さんの問いに
「ちょっとここで待ってて。良美ちゃんの入れるコーヒー美味しいのよ」
 と答える沙希さん。
「愛ちゃんが来たのが嬉しいみたいね。普段沙希さんは絶対こんな事言わないのに」
 中谷さんが私に耳打ちした。

「こちらが例の私の首を繋ぎ止めてくれる山神愛さんです」
 沙希さんは意外と若い女社長(太って額の禿げ上がった男性を想像していた)に私を紹介した。そして
前ページ
次ページ