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3R 入門

 入門を決意してから、弟が買い集めているプロレス雑誌を拝借して予習していた事で、日本にはたくさんプロレス団体があることは知っていた。もっともNJWPが女子プロ最大手とは知らなかったけど。
「あと、比較的入門をいつでも受け付けているってのもあるね」
 中谷さんが言うには、女子プロレス界は新人オーディションに受かってそれで入門、デビューにはプロテストに受かってから、というのが多いらしいが、NJWPはそういうシステムではないということらしい。だから中谷さんや私のような『中途採用』もあるのだと。
「入門したいと思った時に受け付けてたのがNJWPだけだったって訳。他はみんなオーディションまで待ってくれって言われてね。ある意味NJWPは男子プロレス的システムなのよ」
「オーディションが無いのとあるのとではどう違うんでしょうか?」
「他の団体はね、入門が決定したら責任持ってプロデビューさせるって感じだけど、ウチはそこまでしてやる義理は無いって感じかな。練習について来れない人は知らんって感じで。夜逃げする練習生も結構いるよ」
「夜逃げ……、ですか」
 改めて過酷な世界であることを痛感した。

「ついたついた。ここだよ」
 そこはおよそジムとか道場の類には見えない近代的なビルだった。一階はNJWPのグッズショップがある。
「ここでトレーニングとかするんですか?」
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