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3R 入門

「山神愛さんね。私は中谷園子。沙希さんに頼まれて忙しい中わざわざ時間割いて来ました。よろしくね」
「あ、す・済みません」
「へ? あ、もう〜、ギャグくらい解ってよぉ」
 凄いハイテンションな人だ。
「ま、それじゃ行きますか」
 と言うと中谷さんは頼みもしないのに私の荷物を一つ持って駅の構内へと歩き出した。
 電車に揺られながらも彼女の喋りはとどまることを知らなかった。小学校の頃初代タイガーマスクのビデオを見てプロレス入りを決意した事、関節技を覚えるために柔道を始めた事、その柔道では高校の時にインターハイ48kg級で三連覇(!)した事、大学へ進学はしたがプロレスの夢を断ち切れずに二年で中退して入門した事、今思えばアマレスもやっておけば良かったと感じている事、等々、機関銃のごとくとはこういうのを言うんだと、頷きながら私は思った。それにしても高校柔道三連覇って事は高校生時代負け無しって事になるのよね。私なんかが気安く話し掛けてはいけないんじゃないかしら。
「でも意外と格闘技経験無い人の方が多いのよね、ウチは。沙希さんもテニス出身だし。社長は……ソフトボールだったかな?」
 ほんの少し安心した。
「中谷さんは……NJWPを選んだ理由は何ですか?」
「まあ、日本女子プロレス最大のメジャー団体ってのが一番大きいかな」

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