もどる |
2R スカウトと言いかけた私の言葉を沙希さんは遮った。「プロレスはショーだよ」 「……え!?」 一瞬面食らった私だが、沙希さんは平然と続けた。 「だってお金を貰って人に見せているでしょ。これをショーと言わずして何がショーかしら?」 「え、あ、その……」 「野球だろうとサッカーだろうとボクシングだろうと、プロスポーツはみんなショーよ」 「ショー、イコール、八百長って訳じゃないんだ……」 「そうよ。愛ちゃん、今日の試合、八百長に見えた?」 私は首をブンブン横に振った。 「見た上で八百長と言われてしまったら仕方ない、その人にプロレスは合わなかったんだって思えるけどね。でも、見もしないで八百長呼ばわりする人が世の中には多いんだよね」 沙希さんは自嘲気味に笑った。 「八百長には見えなかったですけど、……怒らないで下さいね、腑に落ちないことがありました」 「なにかな?」 沙希さんは相変わらず口をモグモグさせながら聞いた。 「ロープに振られたレスラーは何でわざわざ帰って来るんですか?」 「え? フフッ、あはははは!」 いきなり笑い出したので私は目をパチクリさせた。 |
前ページ 次ページ |