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2R スカウト

「ううん、抑えてたかな」
 唖然、愕然。結局私はワンタンメンを一口、二口食べただけで、後は全て沙希さんの胃に消えた。

 店を出てからも沙希さんはローソンでフランクフルトと唐揚げを買っては食べ、マクドナルドでビッグマックを買っては食べ、と、常に口を動かしていた。
「あのぅ、沙希さん?」
「ん? なに?」
 口をモゴモゴさせながら私の顔を見る沙希さん。
「えっと、そのう……」
 私のほうから話し掛けていながら、次の言葉が出てこない。今日の試合の感想を言おうとしたはずだったけど、今日一日に色んな事がありすぎて、何から話していいのか解らなくなってしまったのだ。
 逆に沙希さんが聞いて来た。
「愛ちゃん、やっぱりプロレスって暑苦しくて汗臭くて野蛮な喧嘩かな?」
「え?」
「正直に言っていいから」
「……暑苦しくて汗臭かったです……。最後の沙希さんの試合なんて凄く野蛮でした……。でも喧嘩では無かったです」
 沙希さんは私の言葉ににっこり微笑みながら頷いた(ハンバーガーを頬張りながら、だけど)。
「よく世間で言うようなショーなんかじゃ……」
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