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2R スカウト

「あなたの身体能力その他はあなたが通ってるジムの方で調べさせてもらったわ。あなたがもし中谷ちゃん……あの控室にいた小さな娘よりも小さかったとしてもスカウトしてる。断言できるわ。誤解しないでね」
 背の高い人が欲しいのではなく、私自身が欲しい。生まれて初めて自分が認められたような気がした。しかしレスラーになるなんて即答は出来ない。
「まぁ、愛ちゃんの人生だから無理にとは言わないけどね」
「でも、私が応じなかったら降格なんですよね……?」
「そんな事気にしないでいいよ。社員としての肩書の為にレスラーしてるんじゃないし。レスラーとしての肩書、チャンピオンってだけで充分よ。そんな事より早く食べないと麺が伸びちゃうよ」
 沙希さんは大量の料理を、どこに入るのかほとんど平らげている。見ているだけでいっぱいいっぱいの私は
「ちょっと食欲が無くて……」
 と答えた。
「もういらないの? じゃあ、くれるかな?」
「だ・大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。箸付けてることなんて気にしないから」
「そうじゃなくて、そんなに食べても平気なんですか?」
「え? あぁ、体が資本だから。でも今日は少し……」
「食べ過ぎたんですよね!?」
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