もどる

2R スカウト

 思わず椅子からずり落ちそうになった。今の全部を一人で食べるつもりなの? 私は考えただけでお腹が一杯になった。
「どうしたの?」
「え? いえ……」
「ふうん。じゃ今私が言ったのをもう一つづつお願い……」
「わー! 待って下さい! え……と、ワンタンメンを下さい……」
「それだけでいいの? 意外と少食ね」
 思わず苦笑してしまった。
 半ば呆れ顔のウェイトレスが去ったところで沙希さんが切り出した。
「愛ちゃん、学生?」
「いえ、去年高校卒業して、今はフリーターです」
「そうかあ。結構結構」
 何が結構なんだろう。
「話は変わるけど、今日は私、始末書ものの不祥事、職権乱用してしまったのよね」
「え? どうしたんですか?」
「私も相手の松田さんも、今日は別の試合する予定だったのよ。それを私の独断でベルト賭けた試合にしてしまったんだ。あ、私、現場監督でマッチメーカーしてるんだ」
「どうしてですか?」
「それはね……」
前ページ
次ページ