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1R 初観戦

 カンカンカン!
「8分23秒、羽根折腕固め、中山美子選手の勝ちです!」
 え? 終わったの? あ、あっちの人が勝ったのか。でもどうやって? ワンツースリーは無かったみたいだけど(この時私は、肩を付けてワンツースリーというルール“だけ”は知っていたけど関節技なんて全く知らなかった)。でも、想像していたより面白いじゃない。私はそう感じ始めていた。もし変な先入観があったらそうは感じなかったかも知れない。プロレスを素直に見ることが出来たのは、ほとんど無知だった事が幸いしたんだと思う。プロレスは、素晴らしかった。続く第二試合以降も、私は心から興奮し、熱狂し、楽しんだ。休憩時には弟の買物をするつもりだった事もすっかり忘れていたのだから、もうプロレスのとりこになってたと思う。
 気付いた時にはもう最後の試合になっていた。まずヤマブキサキの対戦相手の、顔にまがまがしい色の塗料を塗った恐い顔のレスラー(スラッシュ松田)が入場。
「続いて赤コーナー、チャンピオン、山吹沙希選手の入場です!」
 私は花道に目を移した。

 え……!?




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