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2:裁きの草

 石像の前の空間にドアが現れた。カルロスはそのドアを開けて中に入ろうとする。
「カルロス──!!」
 そのカルロスの姿は、まるで水中から水の外を見たように波打っていた。


「呼び鈴の音がする……」
 彼はタオルを腰に巻いてバスルームから出ようとした。が、背後から視線を感じて振り向く。
 湯の張られたバスタブに、東洋系の男──圭介──の顔が浮かんだように見えた。


 カルロスは一瞬足を止め、こちらを振り向いた。そして圭介の顔を悲しそうに見つめると、ドアの中に消えていった。







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