もどる

2:裁きの草

 上から下まで黒づくめの南米系の男が街の雑踏の中を歩いていた。なにかおどおどした様子で、アタッシュケースを大事そうに小脇に抱えている。その男に気付かれないように少し距離をおいて、やはり南米系の男が後をつけていた。
 黒づくめの男がアタッシュケースを持ち直そうと小脇から手にいったんぶら下げた瞬間、尾行していた男は一気にダッシュした。
「!?」
 黒づくめの男が気付いたときには、手からアタッシュケースが消えていた。前方にさっきまで自分が持っていたアタッシュケースを持ち、全力疾走する男の後姿が見えた。
「カ・カルロスか!? 待て!」
 黒づくめの男は後を追おうとしたが、アタッシュケースを奪った男は人込みに紛れて、完全に見失ってしまう。


 所用を済ませた圭介はカルロスの部屋を訪ねた。前日のお礼を言うためだ。
 部屋の中でカルロスはテーブルになにやら乾燥させたマリファナのような草を広げている。
「ケイスケ、来たのか」
 カルロスが圭介に気付き声をかける。
「それは……?」
 圭介が聞くとカルロスはニヤッと笑った。
前ページ
次ページ