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1:タイムストップ時速百キロで走っている車があるとする。停止している車から見たら走っている車は紛れもなく百キロだ。しかし、停止している車が走り出し、百キロの車を追いかけ始めると見た目の速度が変わってくる。五十キロで走れば百キロの車は五十キロに見え、さらにスピードを上げて百キロで走れば時速ゼロキロに見える(止まって見える)。相対性理論を最も簡単に説明するとこういうことになる。そこで最初から時速百キロで走っている車を時間の流れ、追いかける車を時間を止めるマシンに当てはめると、マシンが時間の流れに追いついた時に、マシン側から見ると時間は停止したように感じるという訳だ。その時にマシンを操作した人間はその瞬間の世界に留まる。しかし時間は流れている事に変わりはない。時間が一秒たってもマシンを操作した人間は一秒前、十秒たっても十秒前の瞬間に留まり続ける訳だ。「博士が時間軸から抜けるだけだといっていたことは、そういう意味なんだな。しかし、マシンに関わりの無い世界の時間が流れ続けてはいても、マシンを操作した人間から見たら時間が止まっている事も事実だ。全てが止まっている、分子運動も止まっている……」 その瞬間、研究所のドアが何者かによって荒々しく開けられた。 「誰だ!?」 彼は叫んだが、次の瞬間、目の前が真っ暗になる。頭を鈍器で殴られたのだ。 |
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