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最終章・後編少ししんみりとするミノルだが、直子はことさら明るく『そうだよ! 星来ちゃんも喜ぶよ! 楽しみにしてるから超大作を書いてね! で、タイトルは?』 と言う。星来が死んでから、ミノルは直子にかなり助けてられた部分があった。直子は「元気出して」などのような月並みな慰めの言葉は一言も言わないで、常にいつも通りに明るく振舞ってくれていたのだ。少しは慰めてやれ、と直子の旦那さんに言われるくらいだ。また、ミノルにとって星来の事は忘れる事などできないのを直子も知っているので、わざわざ星来の事を話題に出さない、なんて気を使う事も無かった。それこそ、日常の会話でもしょっちゅう星来の名前が出てきたものだ。最初のうちは直子の口から星来の名前が出るたびに、時にはドキリとし、時には暗く沈んだり、していたミノルだが、直子は直子で、もしミノルが腹を立てて、最悪、絶交となったとしても仕方が無い、あえて自分は悪者になろうと心に決めていた。だからこそミノルも立ち直れたようなものだ。今ではミノルも普通に星来の事を懐かしい思い出として語れるようになっている。そして、直子に対して感謝しても仕切れないほどの恩も感じている。うっとうしく思っていた時期もあったが、今では直子のことを、かけがえの無い親友だとミノルは感じていた。 「タイトルか……。極端に強烈なやつだったからな……。あんな女ってそうそういないぞ。だから……、Intenseってのはどうかと」 『インテンス、かぁ。恋愛小説にはあまり無いようなタイトルだね』 「誰が恋愛小説を書くと言った!? だいたい、俺と星来の話を恋愛小説だと言ったら、世の恋愛作家全てを敵に回してしまうぞ」 |
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