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最終章・後編

『じゃあ、どういうジャンルで書くの?』
「そうだな、ハードボイルドか、あるいはサスペンスホラーか……」
『……』
 受話器越しに嫌な空気をミノルは感じた。受け狙いのつもりがどうやら外してしまったらしい。
「……そ・それは冗談としても、いわゆる恋愛小説にはならないから。強いて言えば、恋愛小説“風”ってとこかな」
『なんとか風って……、それで語尾を上げたら、あんた、コギャルだぞ? 「恋愛小説風?」みたいな』
「まあ、俺はありのままを書くから。ジャンルは読者が決める、でいいんじゃないかと思ってるけどな」
 星来の小説の話題が終わった後も、しばらくお互いの近況や世間話をする二人。

「……ま、そういうわけだから」
『うん、またね』
 ミノルは笑顔で電話を切るとワープロに向かった。

── 完 ──




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