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最終章・後編

『それで、今日はどうしたの? 不倫でもしようっていうのかな? いいよ。さっそくどこかのホテルで落ち合おうか』
「……相変わらずだな、お前……」
 ミノルは呆れつつも、用件を話した。前々から暖めていた事を実行に移す、という報告だ。
『……そうかぁ。星来ちゃんのこと、書くんだ』
 ミノルの話を聞いて直子は懐かしそうに言う。
 ──ミノルは小説家になっていた。
「ああ。だからお前も登場するってことで、その了解を得ようと思ってな」
『いいよ! ただし条件がある! おしとやかな女性として書いてね!』
「……まあ、現実よりはかなり大人しくしてやるよ」
 それでもかなりすごいキャラクターになるだろうな、とミノルは思ったが、言わないでおいた。言えば何を言われるか解らない。書き上げて作品となってしまえばこっちのものだ。
『それにしても、星来ちゃんかぁ。懐かしいね。なんで今になって書こうとしたの?』
「あいつとの約束だからな。さすがに笑い飛ばす事は出来ないけど、あいつのことをネタにしてやるんだってことで許してもらおうかな、なんて思ってさ」
『なるほどね。それがミノルにとっての星来ちゃんの供養になるわけだ』
「……そこまでは考えてなかったけど……、そういう事になるのかな……?」


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