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最終章・後編

 数年後──。
「あ、もしもし? ミノルですけど?」
『ああ、ミノル君、久しぶり。最近頑張ってるみたいだね。このまえ出たやつ、面白かったよ』
「どうもありがとうございます」
『いつまでそんな敬語使ってるんだよ。直子の友達は俺にとってもマブダチだぜ? 今度飲みに行こうな?』
「はい、お供させていただきます」
『だからそれはやめろって。……まぁ、いいか。直子だろ? ちょっと待って』
 その日、ミノルは直子の家に久しぶりに電話をかけていた。直子の旦那さんとも、今では付き合いがあるミノルである。直子抜きの二人だけで、飲みに行ったり釣りに行ったりとかもたびたびしていて、そのたびに直子はヤキモチを焼いていた(どちらに対してかは謎)。
『もしもし、ミノル!?』
 直子が電話に出たので、ミノルはわざと声色を変えて
「──おかけになった電話番号は現在使われておりません──」
 と言うと、すかさず
『かけてきたのはそっちでしょうが!』
 と突っ込みを入れられる。よし、掴みはOKだ、とミノルは思った。


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