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最終章・後編

 星来の母親は淡々と語り始めた。


 星来は妊娠中毒症を患っていた。あの日、星来が実家に行った日に容態が急変したという。星来は、子供を諦めれば助かるが、産もうとすると母子ともに命が危ないという二者択一を迫られた。しかし、星来は断固として産むと言い張ったというのだ。

「死ぬかもしれないのよ!?」
 という母親の言葉にも全く耳を貸さずに
「子供を諦めるって、赤ちゃんが死ぬって事じゃない。いくら危ないといっても、上手くいけば私も赤ちゃんも死なずに済むんでしょ。私はどちらも助かる可能性にかけたいから」
 と星来は言っていたのだ。
「とにかく……、この子のお父さんに連絡しないと……」
 と、ミノルの住所を聞こうとするが
「嫌! この事を知られてしまったら、子供を諦めろって言われてしまう! アイツがそんな事言うのは聞きたくない! 産めって言ってくれたアイツのままでいて欲しいから、絶対アイツの住所は言わない!」
 と断固拒否する星来。

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