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最終章・前編「それにしても……、親にはいつ言おうかなぁ……。女と暮らす、子供も産む、でも結婚はしないなんて、どう説明しようか……」ミノルがボソッと呟く。 「じゃあやっぱりケッコンするか?」 星来が言うが、ミノルは首を横に振る。 「話を蒸し返すなって。これはこっちの問題だから。でも、ウチ、田舎で考え方とか古いから、ありのままを言ってもなかなか納得してくれないだろうからな。なんかいい知恵ないか?」 「……じゃあ、私の親の方に最初に話すよ。ウチは結構くだけてるからあっさり納得してくれるだろうし」 「そうかぁ……。じゃあ今度の休みにでも一緒に行くか。おとうさん、娘さんをボクに下さいって言えばいいのかね。この場合のおとうさんは“お父さん”か?“お義父さん”か?」 紙に「父」、「義父」と書きながらミノルは言った。 星来は思わず吹き出す。 「そんなの発音したらどっちも同じじゃないの。それに親に言うのもまだまだ先でいいよ。確かにくだけてる親だけど、絶対に許してくれるって保証も無いから。いいかげんお腹も膨らんで、親としても反対するわけにはいかないくらいになってからのほうが確実だし」 「うちの娘を孕ませたのはお前かって怒鳴り込まれても困るんだけど……。早い方がいいんじゃないか、そういうのは」 ミノルが言うが、星来は答えずに笑みをたたえたままだった。 |
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