もどる

最終章・前編

 ミノルが殴られたところをさすりながら言うが、星来は
「試合するとかっていうのはさすがにダメだけど、練習程度ならかまわない、むしろ体を動かすという意味ではいい事だって医者に言われたからね」
 と答える。
「……俺は練習台かよ……」
「細かい事は気にするな」
「……それよりも、何をソワソワしてるんだ? トイレじゃないのかよ?」
 ミノルが話題を戻すと星来は
「あ・ああ、そのことだけど、本当にいいのか? 婚姻届出さなくても……」
 と不安そうな顔をする。
「そのことか。未婚の母をやりたいって言ったのはお前だぞ」
「そうだけどさ……」
 ミノルはフッと笑みをもらした。
「確かに俺は結婚するつもりだったけどさ、俺に対して合わせようとか気を使おうとかっていうのは、お前らしくないぞ。お前はお前のやりたいようにやればいいから」
「あ・ありがと……」
「なんだよ、しおらしいフリするなって。それこそお前らしくないぞ」
 ミノルはそう言うと笑いながらベッドに大の字に寝転んだ。

前ページ
次ページ