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最終章・前編

「君にはボクよりもっとふさわしい人がいるさ」
 と、いきなり恵は泣き真似をピタリとやめた。
「……とまあ、冗談は置いといて、いま星来ちゃんはミノルはんの家に住んどるんやんね?」
 急に話題を変えられて星来は一瞬面食らったが
「あ、ああ。アパート引き払ってね。いらないもの処分したらほとんど荷物が無かったし、家も近所だから引越しも数時間で済んだけど」
 と答える。
「恋人宣言したとたん、いきなり同棲かぁ」
「まあ、それ以前から半同棲みたいなもんだったけど」
 星来の言葉に、恵は意味深っぽく「ふ〜ん」と答える。そして
「……ところで星来ちゃん、ちょっと太った?」
 と続けた。彼氏・彼女の宣言したとたんに店をやめて、おまけに一緒に住むようになったことから、恵は薄々感づいていたのでカマをかけてみたのだ。実際のところ、星来はまだ体型的にはさほど変わりは無いのだが。
 しかし、星来は引っかかるどころか平然と
「ああ、妊娠したからね」
 と答える。その答えに恵は思わず飲みかけたコーラを吹き出してしまった。


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