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最終章・前編バーガーの類を注文したら「一緒にポテトはいかがですか?」と言ってくるだろうことを予測して、最初からポテト“だけ”を頼んだ星来である。星来はいわゆるファーストフードがあまり好きではない。吉野屋の牛丼だけは女一人でも平気で食べに行くくらい好きだが(ちなみにミノルは松屋派)、それ以外は、人との付き合い以外で食べに行く事は、まずあり得ない。牛丼なら汁気があるので食べれるがハンバーガーはパサパサした感じがして喉につっかえて飲み込めないというのだ。唯一ポテトだけはなんとか食べれる。 適当にあいた席に座ってポテトをかじってると、恵が慌てた素振りでやってきた。 「ごめん、星来ちゃん。なかなか抜け出せんかってん。ようやく休憩もらえたわ」 「ああ、いいよ。私も来たばかりだし」 二・三、言葉を交わしてから恵はカウンターに行って、いろいろ注文する。最後にポケットから使い捨てカメラを取り出して 「……あと、スマイル、お持ち帰りで!」 と言うのが聞こえた星来は思わず椅子からずり落ちそうになった。 恵がトレイを持って席に戻ると、星来は呆れ顔で 「いつもあんなことやってるの?」 と聞く。 「時々ね。今日の店員さんはたまたま男の人やったけど、男やから写真撮るゆうわけやないよ。もう老若男女撮ってる。やっぱり、ウケ取ってこそ人生の価値が決まる、そう思わへん?」 |
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