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最終章・前編「本当にいいよ。ミノルもこれからお金がいろいろかかるんだし」「……そうか。ま、確かに金がいるよなぁ。……っておい、直子! お前、いつ子供の事を知った!?」 ミノルの言葉に、直子の動きがピタリと止まった。そして、一瞬間を置いて回れ右すると、ビデオの早送りのようにシャカシャカとせわしない動きで席に戻る。椅子に座ると伝票をテーブルの上、先ほどと寸部違わぬ場所に置き、財布を鞄にしまった。直子が席を立つ寸前と全く同じ状態になったところでミノルに顔を寄せ、小声でささやくように 「え? 星来ちゃん、出来ちゃったの?」 と聞いてくる。 ミノルは内心、こいつ面白いやつだな、と思いつつ、こちらも小声で 「え? だってお前、さっきいろいろ金がかかると言ったじゃないか?」 と聞き返した。 「それは今までゲームだったのが、これからは正式に付き合うということで、彼氏として彼女にいろいろやってあげないといけない、という意味で言ったのよ?」 「あ、そういう意味か……。しまった、墓穴掘った……」 「で? 出来ちゃったのね?」 直子の改めての質問に 「……ああ。だからアイツも仕事やめた。普通の仕事ならしばらくは続けれるだろうけど、やっぱ妊婦に風俗の仕事はきついよ」 と答える。 |
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