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第十章

 星来は少し考え込んでから
「本気で言ってんの……? 私が決めていいんだね……?」
 と念を押す。
「ああ、俺はまな板の鯉になりますわ」
 ミノルの“まな板の鯉”という表現に少し笑みをもらす星来。と、不意に吐き気を覚えて流しに顔を伏せる。ミノルは星来の背中をさすりながら
「付き合い始めた頃のお前のセリフ、当たったな」
 と呟くように言った。
「え?」
 ミノルは少し照れたように
「俺なんかに好きになられたらヘドが出るって言ってただろ」
 と苦笑混じりに言った。
「……え……?」
「だから、ゲームの敗北を認めるってことだ!」
 照れ隠しに思わず大声を上げてしまうミノルだった。吐きおわって落ち着きを取り戻した星来が嬉しそうに笑う。
「そっか、私、勝ったんだ……。ついにアンタを好きだって認めさせる事に成功したんだ……」
「あ? その口ぶりだと、お前は俺より前から俺の事好きみたいだけど……?」
 星来は思わず真っ赤になる。
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