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第十章

「ちょっと、それ、余りにも冷たくないか?」
 星来はムッとした。
 ミノルは、星来が怒った理由を悟ると、吹き出しつつ
「いや、男の俺には決定する権利は無いって事だって」
 と言った。星来はその言葉の意味が解らず、ポカンとした表情になる。
「つまり、お前が決めた事に俺は従う、そういう意味だ。子供を産めない男には、そういうことを決定する資格なんて無いよ。少なくとも俺はそう思ってる」
 依然として呆けた顔の星来。ミノルの言葉の意味を頭の中で反芻する。そして、完全に理解できたところで、今度は戸惑いの表情に変わる。
「……じゃあ、産みたいって言ったら……?」
 恐る恐る聞く星来に対し、ミノルは
「ケッコンでもしますか」
 と即答した。
「じゃあ、もしも、だよ……? ……堕ろしたいとか……言ったら……?」
 ミノルは、産みたいに決まってるだろ、堕ろしたいなんて思っても無いくせに、と思いつつも
「費用は全部俺が出しますわ」
 と答えた。


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