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第十章

 ミノルが後頭部をさすりながら
「冗談はさておいて……、で? 今日はなんだ? わざわざ子供を見せに来たのか?」
 と聞く。直子はその問いには答えずに
「打たれ強くなったねぇ〜」
 と感心の一言。
「まぁ、今でも週に一度はこいつの拳か足をくらってるからな。免疫もできてくるよ」

「ねえ、星利奈ちゃん抱いてもいい?」
 直子に星来が聞く。
「あ、いいよ」
 直子が答える。星来は壊れ物でも扱うかのように慎重に赤ん坊を抱こうとした。
「大丈夫だよ。もう首すわってるから」
 直子が笑いながら言う。が、星来が抱き上げた瞬間、泣き出す赤ん坊。
「……嫌われた……」
 星来は赤ん坊の反応に、深く深く傷ついた。
「あのなぁ、好きとか嫌いじゃなくて、まだ親以外の人だと不安なだけだよ」
 とミノルが声をかけるが、星来は珍しく本気で落ち込んでいた。
「ミノルも抱いてみる?」
「あ、いや、俺のせいで泣かれたら、頭では解っていても結構傷つくから……」
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