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第九章

「これに懲りたら、二度と私に失神させられるようなことはしない事」
「肝に銘じておく」
「じゃ、そろそろ寝ろ。明日、病院に行くからな」
 星来は言いながら、ミノルを強引に寝かせた。
「おい……」
 ミノルが声をかける。
「名前で呼べよ」
「……星来……」
「なんだよ」
 ミノルは少しの沈黙の後
「今日はありがとうな」
 と言った。その言葉を聞いた瞬間、星来の目に僅かではあるが涙が浮かぶ。
「なに泣いてんだよ?」
 星来は慌てて包帯の巻かれた手をミノルに見せ付けるようにして
「ケガしたところが痛いだけだって!」
 と言うと、荒々しくミノルに布団を被せた。
「お前はどうするんだよ。俺はもう大丈夫だから帰っていいぞ」
「たまには床ってところで寝てみたいと思ってね」
 星来は毛布を取り出して床に敷いた。
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