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第九章

「じゃ、水持ってくる」
 星来はまたキッチンに行く。そして
「水道水そのままだとカルキ臭いだろうから、さっき湯を沸かしたのを冷ましといた」
 とコップに入った水──湯冷まし──を持ってくる。ミノルは受け取り薬を飲んだ。


「……ったく、バカだね」
 星来がポツリと呟いた。
「バカとはなんだよ」
「風邪ってものはね、あ、もしかして風邪かなって思った時点で対処しないとこういう目にあうんだぞ」
「こういう目って、いきなり正拳突き入れられて失神するような事か?」
 星来はキッと睨むと
「いっそここで永眠させてやろうか?」
 と空手の構えを取った。
「じょ・冗談だって。こんな状態でお前に本気出されたら成す術無いじゃないか」
「……まぁ、そういう口聞けるようなら大丈夫だな」
 言いながら軽くコツンと拳を当てる星来。
「……確かに自己管理がなってなかったのは確かだな……。言い訳じゃないけど忙しくてゆっくり体を休める時間が無かったから」
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