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第九章

 粥を食べ終わったところでミノルは星来の手に巻かれた包帯に気付いた。
「どうしたんだ? それ」
「あ、コレ? 包丁でちょっとな」
「お粥作るのに包丁使うのか? ま、いいか」
 ミノルはそう言うと、包帯の事にはもう触れないでおこうと思った。
 不意に星来が立ち上がり、キッチンからなにやら包みを持ってくる。その包みには薬局のマークがついていた。その中から一つ取り出す。ドリンク剤だ。
「こういうときは栄養をとらないといけないけど、食欲無いだろ? これ買ってきたから、飲め」
 ミノルは受け取ると
「あぁ、サンキュー」
 と言いながら蓋を開けて一気に飲み干した。
「さてと……」
 星来は言いながらミノルの前髪を上げると、露出した額に自分の額をつける。
「熱は大方下がったけど、まだちょっと熱いな……」
 星来は先ほどの包みに手を突っ込み、薬を取り出した。
「これ、熱冷ましに、こっちは風邪薬。同時に飲んでも大丈夫かな……?」
「大丈夫だろ」


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