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第九章

「あ、ごめんねぇ、ウチはサクラは雇ってないんだわ」
 ミノルの職場に着いた星来は、フロントの男性社員にいきなり言われてしまう。
「いや、そうじゃないんです。電話で言っても休ませてもらえないだろうから直接来ました。ミノルは今日は休みます」
「え? どういう事かな?」
「風邪で凄い熱を出してまして」
 星来の答えにフロントは困惑の表情を浮かべた。
「あのねぇ、風邪くらいで休んでもらっては困るんだけど」
 星来はムッとするが、冷静さを保つように自分に言い聞かせながら
「ひき始めくらいならいいかも知れないけど、あれはもうダメです」
 と答えた。
「でもねぇ……」
 フロントの煮え切らない態度にはさすがに業を煮やしたのか、星来は大声を上げてしまった。
「じゃあ何? そんな状態で仕事させて、もしもの事があったらアンタは責任取ってくれるって言うの!?」
 言いながらフロントのテーブルに拳を打ち付ける星来。テーブルに張ってあるガラスにヒビが入り、星来の拳からも少し血が滲んだ。


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