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第九章

「ウチは入院する程でないとサボリと見なされるからな」
 ミノルの言う通り、彼の職場ではどんなに重体でも風邪では休む理由には決してならない。
 星来もこの日は仕事があった。ビデオを見終わってから出発すれば間に合うと思ってミノルの家に来たのだが──。
 星来は携帯を取り出して、店に電話をかけた。店のマネージャーが電話に出る。
「あ、お疲れ様です、メグミです。突然ですけど、今日、休ませて下さい!」
 単刀直入に用件を言う星来。さすがにマネージャーは慌てた。
『急にそんな事言われても困るよ。一体どうしたの?』
「体の具合が物凄く悪いんです!」
 力強く言う星来。
『……凄く元気な体調不良だな……』
「そんなこと、どうでもいいでしょ? 私がいなくても店には影響ないし。指名数とかそういった売り上げ、私、下から数えた方が早いじゃないの」
『いや、でもねぇ、枯れ木も山の賑わいって言うじゃない』
「私は枯れ木ですか!? いいですよ、あの事バラすから! 知ってんですよ!? マネージャーが店の売り上げピンハネしてるの!」
『あ……、えっと、その……』
「とにかく、今日は絶対休みますからね!」

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