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第八章

「だって、アイツは凝り性だから」
 星来が答えると、直子は大きな声で笑い出した。
「アハハ! 本当に面白いように引っかかってくれるね!」
 キョトンとする星来。
「……え?」
「凝り性、かぁ、さっすが彼女。ミノルのことよく解ってるじゃん」
 コーヒーや紅茶の事を言ったのは一種の誘いだ。そこに、思っていた通りの台詞が返ってきたので思わず笑ってしまったのだ。星来は耳まで真っ赤になる。
「も・もういいよ! アイツのことについては直子さんになに言われても否定しない! これでいいんでしょ!?」
 星来の台詞がミノルの言葉と被っている部分があることを思い出して、直子は思わず
「わ。そっくり」
 と呟いた。
「え?」
 星来は聞くが直子は答えずに烏龍茶を喉に流し込む。そして
「カ──ッ! この一杯のために生きてるってもんねッ!」
 と叫ぶ。
「……直子さん、それ、ビールじゃなくて烏龍茶……」

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