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第八章

「ペットボトルの烏龍茶しかないけど。あとはビール」
 冷蔵庫を開けながら星来が言う。
「未成年がそんなの飲んだらいけないんだ」
 という直子に
「え? 烏龍茶って大人にならないと飲んではだめなの?」
 と答える。
「アハハッ、星来ちゃん、ナイスボケ。とりあえず、その、“大人の味”の烏龍茶でも飲ませてもらおうかな」
 星来は1.5リットルの烏龍茶のペットボトルとグラスをテーブルに置いた。そして自分は缶ビールを取り出し、プルタブを引こうとする。が、仕事の疲れだろうか、指に力が入らない。
「あれ……? 開かない……」
「子供はビールなんて飲んではダメだと神様が言ってるんだよ。それにしても、よくそんなの買えるね。店の人に何か言われない?」
「何も」
「ま、背も高いし顔も大人びてるから、店の人も成人と思ってるんだろうねぇ」
 直子は言いながら烏龍茶をグラスに注ぐ。
「ミノルはコーヒーも紅茶も自分で入れるんだけど、星来ちゃんはインスタントやティーバッグさえも無いんだ」
 さり気なく直子が言った。
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